未来対談~災害想定ゲームKIZUKI開発者/NPO法人高齢者住まいる研究会代表・寺西貞昭編~

日々の連携なくして非常時の連携なし

吉本:遠い所ありがとうございました。
寺西:お招きして頂きありがとうございました。

吉本:寺西さんとの関わりで寺西さんってなんでもすべてをゲームに置き換えて考えて方なんですけどなぜそもそもゲームところに特化した取り組みをしているのかな、あれば教え頂きたいと思います。

「思ってもらう」「知ってもらう」「取り組んでもらう」「イメージをしてもらう」。(寺西)

寺西:NPOを作った時は東日本大震災を被災した施設の経験から福祉施設のBCPが非常に重要だということでNPOを立ち上げたんですが、BCPって相変わらず言葉がわかりにくいのと計画作りだけになってしまって、計画をどう機能をするのかというものが具体的になっていないものが多いなと思います。

その時はこれじゃなくて職員さん全員が災害に対して意識を持ってこのままじゃだめだと。自分たちはこのままじゃだめだとちゃんと備えていかなくちゃいけないんだと思ってもらうことがBCP策定の一番の元のベースである。

じゃあ、みなさんの災害を知ってもらうため防災に取り組んでもらう第1歩として、自分たちが勤めている施設で大きな災害が起きたらどうなるんだろう?ここのイメージがもっとも重要なところだと思ったんですよ。まずはイメージですよ。どうなるのか、イメージをしてもらうために考えていったらゲームだったんですよ。

吉本:BCPの根底にあるものはゲームなんですよね。
自分の熊本地震の時もそうだったんですけど体験しないとどうしてもイメージが湧かない、昨日の話じゃないですけどある職員さんと話している時に考える暇がない、現場のことでいっぱいいっぱいなんだと。現場の事でいっぱいいっぱいで+α防災は全く結びつかないと言われました。

これは、グリーンヒルみふねの職員が熊本地震の前に思っていたことと一緒だな、体験してないものはイメージできないんです。

このKIZUKIを体験させてもらって、頭の中でイメージしたものを文字化して、矢継ぎ早に出てくるイベントカードがまるで熊本地震の体験しているかのように感じたのです。

見える化することがやっぱり大事な方針なのかなと思いました。

吉本:人間は、ついつい同じことを繰り返しやってしまいます。
それは事故と同じでその場を何とか切り抜ければいい。と、つい安易な考えに陥りがちです。

記録をおろそかになるということは、そういうことかもしれません。

災害もそうでしょう。

記録がなければ、万が一同じような災害が起きたとしても、やはり同様のパニックに陥ると思います。

寺西さんと私の存在意義は、伝えるということで、それを無くしていくことが重要だと思います。

寺西:事前対策が絶対的に重要で面白い、人にイメージしてもらうそれを起きた時どうする?事前シュミレーションが重要で僕としてはそれが楽しい、その対策が功を奏して、こういうことをやっといてよかったねっという結果に結びついて行けば最高ではないでしょうか。

その事前のところをね。ゲームとか楽しみとか遊びのところと融合をしていって実は介護と防災って全く別ものじゃなくて、だから日常業務が忙しくてできないのはわかるけど、それが完全に別物と考えているから、そういう風な捉え方になってしまっているのではないでしょうか。

これってほとんど重なっていくのでリスクマネジメントの観点から見ていったら、本当の価値とは、このゲームにとってチームマネジメントだったりリーダーシップにあると思います。

災害がテーマですが、実は日常業務と同じことが災害でも考えられるということを、やっと気づきはじめているのはないでしょうか。

だからこそ、吉本さんのところでは熊本地震で失ったもの、悲しみや辛さ、たくさんあると思うですけど、その中から芽生えたものがあると思うです。

それを通して乗り越えた個人、地域はどう変わったのかを皆さんに次の段階として伝えて欲しいです。

吉本:そういわれると失ったもの多かった、自分はどっちかというと楽しみを探そうという感覚で接しましたね。

何すると楽しいかなって、どうしたらみんな笑顔になるのかなを考えてました。

いろんな方法があると思うんですけど、天気が良いから外に出てみようかなと、ちょっと声をかけたり、自分の講演の中にもあったのですが、職員と職員の子ども、お年寄りが、天気の良い日の園庭で、お年寄りがその職員の子どもに話しかけて「僕何歳?」と話しかける場面がありました。

それは日常的な会話ではあるんですけど、多分、非日常ですね。

その場に普通、職員の子どもいるということは、ありえないことですし、そもそもデイサービスの業務中にゆっくりと園庭で話している場面を他の職員が見た時、あの人座ってばかりで”ずるい”なと思うのが普通だと思います。

しかし、震災ということもあって、全くそういうものはありませんでした。

これは非日常でありながら、日常的であったのかもしれません。

こう考えると、非日常というものはないのではないか。
勝手に私たちが非日常と思いこんでいるのかもしれません。

寺西:開口のスタイルを自分たちで勝手に決め込んでいる。

こうあるべきだとか、こうするべきだという風に、固まってしまっているから、実はそこに少し変化をつけてあげると、大きな目標が立てれるものではないかと思います。

やはり体験してないものは、本当にイメージできないんだなと感じました。(吉本)

吉本:数学的なところじゃないんですけど、1+1=2。という”2”という答えをすぐに出したがるのが人間です。

”2”にたどり着くには、掛け算でも割り算でも数式でも色んな方法で”2”にたどり着く。

そう考えると結果ってよりはむしろ、その過程が大事です。

いわゆる積み重なる過程。

そんな話し合いなのか、物の充足なのか、わかりませんが、何かに焦りすぎているのかもしれません。

時間がない?何かに追われている気がするんですよね。

もうちょっと余裕をもって色々考えれば、日常と非日常が結びつくのではないでしょうか?

介護と防災を置き換えた時に、なんでこうしないといけないの?という焦りから、

普段、起こりえないことが起きた時に、焦ってしまいがちですが、

KIZUKIというものは、楽しくイメージできると確信をしています。

イメージ出来れば、例え震災を経験してなくてもなんとかなるかもしれません。

寺西:自分たちが思ったようになっていくんだろうなっと最近、感じるところで確かに悲観的に考えたらそっちの方向に流れていっちゃうし、忙しいからできないよ。みたいな発想であれば、いつまでたってもできない。

でも、忙しいのだけども、震災をイメージすることが大事なので、そうした一歩踏み出していくと新しい景色が見えてきます。

楽しければ好きなものに次へ次へ進んでいけます。それが最終的に震災をイメージするという大切なところにたどり着くのではないでしょうか。

寺西:どういうところが素晴らしい状態だと言えるのか?

うちの施設は、あの熊本地震を乗り越えて、職員が成長して、こんなに良いサービスが出来て、みんな生き生きと働いている姿を見に来て欲しい。成長したんだよということを震災を機に誇ってほしい。

誇れるもの

吉本;熊本地震のボランティアに来た人がこんなこと言っていました。

「大変そうでみんな悲しんでるんじゃないか」すごい気合いを入れて来ました。

しかし、逆にみんなが笑顔で私を温かく迎えいれてくれました。

本当にここであの熊本地震があったのかなと感じる瞬間でした。

逆に元気づけられた勇気づけられましたありがとうございました。」と、そう思わせてくれた職員を私は誇りに思います。

ボランティアの方は本来、気持ちを引き締めてやっていこうと思うんですけど、

私たち自身、実はそんなに意識はまったくありませんでした。

寺西:結局、それって介護に繫がってきませんか?

お世話をさせてもらうんですけど、反対に喜びを利用者さんから頂くじゃないですか?

元気をもらったり、勇気づけられたり、介護職員とご利用者はそのような関係性があると思うんですよね。

吉本:職員には意識して接してくれとも言ってないんですけどね。

無意識のうちにみんな出来ていてすごいありがたいなぁというところがありますね。

地震という非常事態だったからこそ、私たち自身、ひとりひとり育っていくのかなというところがあります。

寺西:そう考えると日常のケアと実は深く結びついています。

切り離して考えるのではなく日常のケアと災害と深く結びついている。

吉本:日常の生活をしている中でたまたま災害があった。

災害は特別なことではなく日常的にあり得ることなんだと考えれば、災害とは重く考えなくても良いような気がします。

寺西:シビアな災害発生、利用者の”転倒”や”おう吐”もそうではないでしょうか。

吉本;起こることをある程度想定しておくと、覚悟が出来ると思います。そういう意識が大事なのではないでしょうか。

寺西:それを職員さんが臨機応変に日々対応しているのですね。

吉本:そうだと思います。

寺西:もともと強い所があるんですね。メンタル部分を含めて。

吉本:メンタル面で。

寺西:緊急事態とは、実は色々な場面で発生しています。それをチームワークで対処してたりしますよね。

吉本:九州は、台風の災害が多いので、その時も別に職員さんに「泊まりなさい」と言ってないんですが、自主的に泊まってやってくれてますね。

早番が次の日来れないかもしれないから。

台風は不思議と夜に来るんですよね。

昼に来れば良いと思うのですが、夜に来ると、早番が来れないかもと考えてくれている。

そのような考え方を、日頃からしていたので今回の熊本地震のような対応をしてくれたのではないでしょうか。

私が一番印象に残っているのは、前震が来たときに家に帰る途中、職員がハンドルを切って施設に戻ってきてくれたことです。

その職員に後日理由を聞くと、「何となく無意識に来ました」という返答でした。

つまり、”自分の仕事はこれなんだな(利用者の安全確認をおこなう)”と理解してくれている。

もちろん家族も大事なんですが、お互いに職員と施設は、持ちつ持たれつの関係性なんでしょうか。

次に、”住まい”と”食”が困りました。

まずは住まいの提供、小さなお子さんをいる方、通常業務の時は短時間しか出てこれない。

しかし、子供が施設にいることで、安心して長時間働くことができたり、夜勤とかもできるのです。

また、お父さんお母さんを介護している職員がいましたが、「お父さんお母さんも連れてきても良いよ」と、その職員に伝え、安心して働ける環境づくりに取り組みました。

だから熊本地震の時に、職員はひとりひとりが能力以上のちからを発揮してくれたのだと思います。(吉本)

寺西:安心して働ける環境作り、災害時にそうされたことですけど平時の時も職員さんが安心して働ける環境作りも長としての役割なんですね。

そこをしっかり押さえてあげるとそれぞれの能力を現場で発揮してくれるのでしょうね。

吉本:熊本地震の時、みんな能力以上の能力を発揮してくれたな。そんなことも考えてくれたんだ。とか、自分の考えてる中で、職員が先手、先手で考えてくれ、私が確認した時には、「もうそれって済ませてます。」と言ってくれたので、長の私も安心できました。

きっとお互いさまの気持ちが芽生えたのかもしれません。

理想は”自分がいなくても施設はちゃんと回っている”ということかもしれません。(寺西)

寺西:実際に被災体験で職員さんが成長されたということで、今のグリーンヒルみふねでどのように吉本さんにとって映っていますか?

吉本:そうですね。なんか、自分が居なくても回っているような気がしています(笑)

変な言い方をすると、今、自分がやりたいことをやらせてもらっているところがあるかもしれません。

やりたいこととは、地震を通してやっぱり備えが大切だよと全国の施設に伝えていくことです。

県外に出ることで新しい出会いが生まれる。

その中で新しい自分を発見していく、出張講演とは、講演に行くだけではなく自分探しの旅なのかもしれない。

新しい自分を発見できることが県外出張の魅力ですね。

周りの人が自分の能力以上の物を引き出してくれているというか、実際に寺西さんとか私の能力以上のものを引き出してくれています。

KIZUKIは、一宮の福祉フェアの時、バタバタして名刺交換もままならない状態の寺西さんって本当に忙しい方だと当時は思いました。

「吉本さん明日の午前中、時間ありますか?」と声をかけて頂き、「ありますよ~」と返したのがきっかけで、それもすごい出会いだなと思います。

実際、長く出会っている感じですが、去年(2017年)の9月ぐらいからのお付き合いですね。1年たっていないですね。

寺西:ある部分、吉本さんが話している時は、グリーンヒルみふねの職員さんたちの成長が嬉しく思っているところが講演の中に含まれている気がします。

頼もしくなった職員さんたちのメッセージが、乗っかってるような気がします。

吉本:本当、やっぱ嬉しかったですよ。

講演の中でいろんなエピソードを出していますけど、栄養課の管理栄養士の職員が「施設長、みんな職員さんお腹空いているかもしれないのでなにか作って差し上げてもよいですか?」といってくれて、自分がみんな作ってくれといってるわけでもなかったのに自主的に考えてくれ、ありがたかったです。

思いやりがあるということは非常にありがたいことですし。不思議な感じですよね。上手く言葉にはできないですけど自分らしさですよね。自分もそうですが、グリーンヒルみふねは自分がやりたいことが実現できる施設にしたいなと考えています。

寺西:良いですね~

吉本:職員の夢でもあるだろうし、自分もそうですよ、自分のやりたいことをやっていきたいなって、当然、組織の中で守るべきことはきちんと守らないといけない。

その中でも目的は一緒だと思います。お年寄りを幸せにしたい。というところです。

それは自分の成長であり、施設長という職種の成長。

人って自分自身が評価するわけではなく、周りの人が評価してくれる。

「俺が!俺が!」と言っているうちはたぶんダメだと思います。

そういったことを職員一人一人が意識してくれているのではないでしょうか。

頑張ればいつか報われるよ。努力していけばいつか報われるよ、自然に身についているのだと思います。

寺西:その職場の捉え方で、そこが自分の夢を叶える場所であり、それを応援してくれる仲間たちが人の夢を支えてあげる。

いい形で災害を乗り切りながら心の中にある優しさを表に出したのでこれが良い機会になったのではないでしょうか。

普段、そういうのってなかなか恥ずかしくて言えない。
災害を通して自分の中にある優しさ、思いやりを表に全部出せたということでもあったのではないでしょうか?

吉本:まさにその通りだと思います。最終的には人ですね。

寺西:多くの介護現場って人間関係が複雑になっちゃって、それが原因で退職しちゃう事例がかなり多くって、でも、お互いが実は思いやりや優しさがあってその表現の仕方がよくわからなかったり、恥ずかしかったり、ボタンの掛け違いがあるのかなと思います。

吉本:言い争いの主語は誰なのか。
衝突が多いのであれば、私は大いに人間関係に原因があると思います。足を引っ張りあいは反対で、むしろ前向きな議論は賛成です。大いに議論していった方が建設的だと思います。

議論し合うことでお互いそういう考えがあるよね。お互いが妥協するっていうのも変ですが、妥協することが一番成長できること。

もっといえば受け入れることができる。そう考えると言い争っている主語は何なのか。

ひょっとしたら自分のことを言っているのかもしれない、相手の事を言っているのかもしれない、事業所のことを言っているのかもしれない、でもそれは自己中心的な考え方になっていると思います。

それはやはり利用者様のことの議論だったらもっともっと客観的な話し合いができるのかなと思います。

主観的に話をするから意見が衝突する。

”あなたは受け入れないよ”という風になってしまいがちです。

寺西:そうですよね。話の中心が利用者さんであることですよね。

吉本:地震の時は精神的に追いつめられると言わなくてもいいことを言ってしまいます。

やはりその中で、お互いが思いやる気持ち、もう一回理念の中で目指すべきところを目指そうよ。

理念の見直しをみんなに図ったことで、一つ上手くいったというのも変ですけど、ある職員が私にこう言いました。

「施設長、自分たちって熊本地震で苦労したんだけど苦労してないですよね。上手くいきすぎませんでした?」

上手くいきすぎた。そう考えれば色んな選択肢があった中でも上手くできたのかもしれません。

そう上手くいったものを、

そのBCPを(BCPとは、事業継続計画の略)危機管理の部分で作成していくうえで、実際にできたことをBCPとして取り入れようとしました。

彼の中で悩んでしまい、上手くいきすぎてしまったので何ができなかったのかわからない。

寺西:お話し聞いているとおもうですが、ある意味、熊本地震では奇跡の連続でしたよね。

吉本:あの大地震の時に、勉強会だったということは今だに信じられません。

普通勉強会というと21時までに終わるのですが、その日がたまたま、勉強会が長引いたのもあると思いますが、運の良さも繫がっていったと思います。

彼の「上手くいきすぎましたね。」という言葉は、ここにあるのかもしれません。

これをどのように皆に伝えていけばいいのか悩んでしまいます。

寺西:上手くいかなかった場合を想定してみるのはいかがでしょうか?

吉本:あぁ、なるほど。

寺西:1日ずれた場合、職員は夜勤の3名しかいない。

登ってくる道ががけ崩れ、職員が上がって来ることができない状況。

雨も想定で降らしちゃったりして。

施設長は自宅で家具の下敷きとなり息子さんとケガで入院したと想定しましょう。

吉本:施設長は1か月、骨折で入院してしまいました。じゃあ残された職員はどうする?というものを想定する。

そう考えると、グリーンヒルみふねは実体験をしていないので、どうすればいいか考えるかもしれないですね。

それを考えることが、災害を想定するということですね。

だから考えるということの重要性を日頃から考えておかなければいけません。

寺西:BCPの作り方は、そういうものであって、最悪の事態からどうやって復旧・復興していく事を作っていくので、
想定は最悪な状況じゃないイメージができませんし、そもそも奇跡は起きないということでしょうか。

吉本・寺西:奇跡は起きない。

吉本:なんでしょうね?不思議な感覚なんですけどね。

寺西:ですから、ある職員が言われたようなことなんだと思いますよ。

本当に奇跡の連続の中で、”上手くいきすぎた”というような感覚がある意味全てなのかもしれません。

そんな奇跡はたまたま偶然に成せる業で、今後起こりうる大震災、とかを考えた時におそらく支援はしばらくのあいだ来ない想定をしなくてはいけないし、電気や水道などのインフラは長い期間ストップしてしまう、職員も被災しているので職員自身も施設に参集できない。

吉本:そういうのも考えられますよね。

寺西:水も食料も。広域的な災害になった時は入ってこない。どうやって生き延びていくのか。

吉本:大震災になった時、道が寸断されるのでグリーンヒルみふねは、山の上ですので、おそらく孤立します。

ここから白旗を立てて「助けてくれ」と言うかはわからないですが、そういう方法も考えられます。

最悪このような想定をして、行動できるのかが課題だと思います。

寺西:それをまた伝える講演もありかなと思って。想定していない逆説のパターン。

吉本:そうですね。様々な状況があるなかで、どれを優先順位に選んで良いか瞬時の判断が求められます。

私が熊本地震で選んだ選択肢は、偶然にも良い方向に傾きましたが、選択肢によってはあり得ないシナリオが想定された訳です。

自分のいなかったグリーンヒルみふねはどうだったのかな?とか、自分が入院していたと思われる2週間か3週間かわかりませんが、どうだったのか?そういうことを想定して職員に行動をしてもらう。

寺西:そうですね。代行者がその場面・場面でどう判断したのか?その瞬時の判断でどう好転するのか?
そのあたりをイメージしながら作ってもらうBCPが非常に実効性が高いものになります。

吉本:それが必要になってくるんですね。

今までの講演は、実体験として伝えているのですが、こう選択肢をとっていたのならば、どう変わったのか?考えるようなワークの時間を取ってもいいと思います。

良い選択肢の答えは事実として残っているのでこうすれば良かったのかなとわかります。

寺西:良い選択肢のシナリオをAとするのならば、それはシナリオBかもしれません。

吉本:そのような職員研修もやってみると良いのかもしれないですね。

寺西さん8月9月ほぼ1カ月ごとにきてくれるので、また、そういう企画をよろしくお願いします。

寺西:それがたぶん職員さんの成長を助けにもなると思います。

自分の頭で考える、判断する、行動する、人材作りに繫がっていくのではないでしょうか。

吉本:そう考えると自分の役割がどんどん無くなっていくので寂しくなってきますね。

寺西:いやいや、それが大事なんですよ。

「素晴らしい組織」って本読んだら、受け入りなんですが、

今日例えば、吉本さんが仮に居なくなったとして回っていく組織というものは、実は自分が作った組織であるという”自分の誇り”みたいな
ものになり得ませんか?

吉本:あ~なるほどですね。

寺西:自分が今居なくなったとして、「うちの施設はちゃんと回っていくよ」と自身を持って言えることを目指してもらうのも良いかなと思います。

吉本:そういうのありかもしれないですよね。

寺西:ちょっとかっこよすぎませんか?

吉本:でも、そういうこともありですよね。

最近、自分の役割ってなんだろう?って思うようになってきました。

どんどん職員が自分で考えて行動し、成長していって、そういうところまでいちいち報告しなくても良いよ。

自分の関わるところは大きな部分しかなくて、そのような環境の中で、施設長という役割を見つけていかないといけないと思うようになりました。

寺西:そうですね。そうですね。

吉本:当面の目標は、やはり、後継者の育成です。

本当に命をかけてというと大げさになると思いますが、自分が居なくなっても、さっきおっしゃったように施設が回る、その目標が達成されたときに、次のステップとして自分がどうあるべきなのか?と思います。

後継者の育成とは、本当に永遠の課題だなと思います。

その時代背景にあったものにしていかないといけないと思います。

寺西:自らの頭で考える。

吉本:指示待ち人間のように、自分が考えなくても、上からの命令で動けば人間は誰しも楽です。

その中で、いろんな意味で責任を誰がとるのか?と考えるようになります。

当然なことながら最終的にはトップが取らないといけませんが、責任を取るから、自由にして良いよと言えば、職員自身の自分らしさが出るのではないでしょうか。

寺西:みんな一人一人が主体性をもって取り組んでくれれば良いですね。

吉本:無意識のうちにできているのが一番の理想だと思います。

寺西:そうですね、知らないうちにそういう組織・チームが出来上がっているといいですね。

吉本;阿吽の呼吸というわけではありませんが、そうした問題が上手くいけば”楽しい職場”になると思います。

寺西:このような成長をしてもらう為の手法は、いくつかあると思うのですが、一つは、やり方を示すとか堅苦しくこうだこうだっていう風なやり方もあるかもしれませんが、その人その人にとって合うやり方があると思うので、このグリーンヒルみふね流のやり方で職員の後継者の育成につなげていくのが良いのではないでしょうか。

吉本:今の研修は、介護保険の最低基準のようなもので、これだけ知っておけば、あとは自分たちの考えでやっていただければ自分たちなりの解釈でやっていければよいと思います。

なんでもこれはダメ。これはいいよとルール作りをしてしまうと息苦しくなります。

今の法律とかそうですよね。

ことがあるたびに、法が整備されルールがどんどん厳しくなります。

今の個人情報保護法も、悪いことをする人がいるから、いざ災害時に高齢者の情報が行政から頂けません。

じゃあ、いざ非常災害時に、行政の方にどういった人が居ますか?と聞いても教えてくれません。

行政だけもっている情報は、なんの役に立つのかなと震災時は特に思いました。

自分に例えれば、自分の持っているたくさんの知識があると思うのですが、自分だけ持っている知識を蓄えていても、なんの役には立たないと思います。

いかに周りに伝えるか?それがまさに後継者育成につながるのかもしれません。

寺西;自分の貯えている知識を職員さんにどんどんプレゼントしていく。

吉本:そんな感じですよね。自分だけ知っていると、優越感に浸れるということもあるのでしょうが、その優越感は一時的なものだと思います。

”周りからみれば、だから何?”みたいな・・・。

個人として優越感って個人としての価値ですよね。

その人を客観的にみれば、何を言っているのか?ただそんな感じになるんでしょうね。
自分の持っているものをプレゼントするということが自分たちに必要なのかもしれません。

寺西:ある年齢になると、今度は後継者とか人の成長が喜びになる。それを見ているのが嬉しい。そういう気持ちになる。

吉本:そう考えると子育てと同じような気がします。

子どもは、1.2歳の時は大変ですが、10歳ぐらいになると、こういう風に考えてくれたのかな?それを職員に置き換えると1~2年目の新しく入ってきた職員は右も左もわからないと思いますが、10年~15年たつと自分なりに介護の考え方など、確立されます。

役職者や経営者の手助けをしてくれるそんな感じでしょうか。

寺西:具体的にそれがやりたいとか、目標とか、実は見つからない人が圧倒的に多いような気がするんです。

それを一緒に探してあげるのも私たちの役割かもしれませんね。

吉本:役職者がそれに気づいてあげられるかどうかで、組織の雰囲気も変わってくると思います。

組織づくりや後継者育成に必要なエッセンスです。

今日はお忙しいところ、ありがとうございました。

寺西:ありがとうございました。

寺西さんとの対談を終えて

寺西さんとの出会いは、まだわずか1年とちょっと・・・。この一年間は防災講習会に一緒にセットで講演・ワークショップをすることが多く、すでに五年以上前からお付き合いしている気がします。

寺西さんの頭の中は楽しく学ぶ!楽しく学ぶツールとして考えたものがカードゲームという斬新なところにまた、魅力を感じます。寺西さんと活動していき、全国15か所以上延べ人数1,000人を超える人が、私の平成28年熊本地震の被災体験談を視聴してくださっています。

リアル+バーチャルの組み合わせが、全国の皆さんに支持されているようにも感じます。行政からのお声がかかると私自身も活動をやってきてよかったとつくづく思います。

日本ではいつどこで大災害が起こるかわかりません。未災地と呼ばれる地域に少しでも多く、震災体験を語り続け、私たちの同じ苦しみを味わってほしくない。そう願いながら、今の全国の皆さんに伝えなければいけないという気持ちになったのも、寺西さんという存在です。

今後とも全国行脚を続けていき、全国に『災害時相互応援協定』で社会福祉施設同士が助け合えるシステム構築に乗り出していきたいと思います。

平成30年9月30日 吉本 洋