福祉専門職としての挑戦(2012/8/31)
2012年08月31日
旧日本ネイチャーゲーム協会(現シェアリングネイチャー協会)ハンドブック掲載依頼原稿となります。
★なぜ、介護保険利用者が対象なのか
みふねもりもりネイチャーゲームの会は特別養護老人ホーム、デイサービスセンター、保育所型認定こども園に勤務している介護福祉士や保育士等の専門職12名で構成されています。なぜ、福祉専門職から始めたのかといいますと私自身ある疑問があったからです。
介護保険サービスを利用されているお年寄りは施設職員に比べ、季節を感じる機会が少ないのではないか。介護保険サービスを利用されている方は自ら動くことに何らかの制限(車いす、ベッド生活、杖など一人で動くと不安定な方・・)があります。近年空調システムが格段に向上し、外が暑いのか寒いのかそれさえもわからない。
安全という名のもとに、年中施設に閉じこもっているお年寄り。ふとしたそんな疑問から、お年寄りの失われつつあるさまざまな感覚を呼び覚まそうと考えたわけです。
★まずは、お年寄りに・・・。
『フィールドビンゴ』失語症の方が一生懸命に「あ~。う~。」と言われていましたので何か見つけましたか?とお尋ねすると黄色いチョウがいたらしく、チョウですか?とお聞きしたら頭を数回縦に振られました。
ある方に、葉っぱについた雨のしずくを頬につけると「冷たい!!」という何とも言えない表情をされたのが印象的でした。ちょっとした表情の変化や会話がいつも以上に弾んだことは私たちの活動で大きな意味がありました。
★お年寄りの特性を知る
どこまで声かけしていいのか。黙っていれば何も感じないのではないか。「その人にあった声かけの方法」を身につけ実践していく必要性を感じました。お年寄りの場合、短時間でも変化を感じることができた(表情・会話等)ので本人の能力をどこまで引き出すことができるのかリーダー自身の質の向上や利用者の方の情報(身体的機能・認知症の度合い)収集が大切です。
つまり、お年寄りの特性を知るべきであり、介護保険施設とは何か、認知症とは、福祉用具の適切な使い方、周りにどんなフィールドがあるのか。リーダーの気持ちとしても「また行きたい」「また、したい」と思ってもらうことが重要で、「楽しかった思い出」がこの活動を持続させる秘訣だと思います。
★お年寄りへの実践
「カモフラージュ」カモフラージュが始まると目の色を変え「ほー、ほー、あそこにあったい!」と熊本弁丸出しで声を荒げる人もいました。物事をしっかり見るということは集中力を養う訓練にもなりますし『見て、集中して、探し出す。』という行為は認知症の予防や介護予防につながってくるので、今後脳の活性化の訓練に有効であると期待します。
「感触の宝箱」何が入っているのかという興味と手を入れる瞬間、職員の顔色をうかがう方がいてとてもその顔が印象的でした。お年寄りの手の感覚は私が思っていた以上に敏感ですぐにわかる方もいました。ドングリを入れていたのですが、戦時中の貴重な食料で兵隊さんにもたせていたそうです。椿の実を見て、髪の毛に椿油を頭に塗っていたことや椿油の作り方まで教えてくれました。そんな回想法的な想像につながったことがわかりました。
★活動を通じて得られたお年寄りへの効果
「普段、室内ではなかなか自分で食べようとしない方」外で食べるということで自ら箸を使い、完食された方がおり、日頃から食事介助することで職員自身がこの人は自分で食べることができないという決めつけがあったのではないか。自ら食べることができたということは大きな意味があります。
「日中はとても穏やかな方だが夜になると豹変する方」単発な活動では特に大きな効果は見られませんでしたが、何度か外にお連れしたことで夜間の様子が緩和されました。日中活動したことで夜間、落ち着かれるなら定期的な散歩は有効です。
「現段階でほとんど効果の見られない利用者の方」話し方、表情、導入の段階の工夫や接し方が必要であると考えています。どうやったら認知症の方に理解していただけるのかあるいはどうやったらその方の世界に入り込めるのか、あらゆる可能性を探る必要があります。
★これからのわたしたち
最終目標は世代間交流ですが、世代間交流を追求するうえで大切なことは、子供たちとお年寄りが交流することにより、子供たちが施設入所されているお年寄りを身近に感じてもらい、その子供たちが大人になったとき施設入所されているお年寄りへの偏見の目をなくすことです。世代間交流をすることでお年寄りは昔ながらの伝承遊びや昔話を思い出すことで回想法やその趣味を生かした生きがいにつながります。子供たちはお年寄りと交流することで学びの場として知識を深められます。活動を続けるうちに生まれ育った故郷に対し愛着心が生まれ、本当の意味での地域活性化につながるのではないでしょうか。