介護現場を離れて(2011/3/24)
2011年03月24日
私はもともと営業マンでした。『お客様は神様』今は現役を退いた百貨店勤務の父の教えです。目上の人に対する言葉遣い、しぐさなどよく父から指摘を受けたものです。コンビニエンスストアの経営指導が私の役目でした。
コンビニの接客マニュアルは『身だしなみ』からはじまり『会釈の角度』『おつりの渡し方』、『電話応対の仕方』『袋詰めの仕方』などすべてマニュアル化されていました。結婚を機に介護の世界に飛び込んだのですが、まず資格のない私はホームヘルパー2級の資格を取得することから始めました。
座学、実技等基本的な内容を1か月間の研修から学んだ私は基本を学べば応用がきくはずだ。よし、福祉の仕事を極めよう!『将来は福祉を極めたいです!』と豪語した私に当時の先輩から笑われました。しかし、実際介護の現場は甘いものではありませんでした。利用者の方に怒られ、上司に怒られながら日々苦悩する毎日でした。
今思えばあの先輩の言っていた事がようやく理解できた気がします。移乗するにも自分より大きい人、自分より小さい人では方法が異なること。利用者の気分によって同じ声かけをしても反応が違うこと。まさに十人十色でした。習ったことが通用しないことでプレッシャーになったり、落ち込んだりすることもしばしばありました。
こんなに頑張っているのに何で理解してもらえないんだろう。ある時、ふと『自分が行っている介護は自己満足ではないか。自分の物差しで利用者に介護をしているのではないか。』ということに気がつきました。利用者のニーズを知ることが介護負担の軽減になる。自分と利用者の間に話題が常にあり、会話がと途絶えない。利用者の気持ちを事前に察することで利用者の不安が解消され、それが信頼につながる。自立支援という言葉の意味が実体験を通じて理解することができました。改めて介護の奥深さを感じます。
現場を離れて3年が経ちます。人と人が触れ合う介護現場なので、基本的な接し方は何年たっても変わりませんが、私が現場にいた時代と今の介護保険改正後の介護理論、介護方法、介護記録等より専門的になっていることは確かです。ここ数年で介護の現場は格段にレベルアップしており、本当に今の職員はよくやっているなとつくづく思います。
私が利用者の方とどんなお話をしようか、と思った時に話のネタがないので現場で職員が利用者の方とコミュニケーションをとっているところをみるとうらやましいな。と思ってしまいます。職員と利用者の間でしかわからない会話についていけない自分がなんとなくさびしくなったりするものです。利用者の方が気を遣ってくださるのもよく分かります。
『あんたも忙しかもんな。しかたなかたい。たまには現場に顔出しなっせよ。』嬉しい言葉です。最近はレクリエーションに飛び入り参加して楽しんでいます。
今日も施設のどこかで職員と利用者がどんな人間模様を展開しているのだろう。そう思うと心が満たされる感じがします。今後もやさしい気持ちで現場を見守っていきたいものです。
※2011年のグリーンヒルみふね旧広報誌に掲載されたものです。