介護保険施設の終わりなき挑戦 ~あの感覚をもう一度~(2015/12/8)
2015年12月8日
2015年にネイチャーゲームコーディネーター機関誌掲載の内容になります。
老人介護施設の施設長と地域の会の代表、2つの立場を活かしたコラボ活動を展開。
施設でのネイチャーゲームの活用・展開に取り組まれています。
◆きっかけと近況
『施設に入所するお年寄りの方々に少しでも季節感を味わっていただきたい』このただひとつの思いから、私の挑戦がはじまりました。
施設入所では外出も制限されがち。これは、転倒骨折というリスクを避けるための独特な風潮で、介護施設のほとんどは、安全という言葉をつかい、施設に閉じ込めてしまっているのが現状です。
そうしたことを少しでも解消しようと、平成23年から取り組み始めたのがシェアリングネイチャーの活動でした。
近年、認知症に関するニュースなど、話題になっていますが、認知症予防の非薬物的介入方法の代表的なものとして、自然体験、いわゆるシェアリングネイチャーの活動が注目されつつあります。使わなくなった五感は、どんどん鈍っていくだけです。
外に出ることで風を感じ、虫や鳥の声を聴き、散歩することで生活の質が改善できます。認知症の方の五感を刺激することで昔を思い出し回想する。こうしたことが、認知症の進行を緩やかにするのです。シェアリングネイチャーの活動を施設内で継続させることで、「お年寄りの方々に残された人生を楽しく過ごしてもらいたい」と切に願い、日々活動しています。
◆苦労話とやりがい
導入時期は、施設内の職員にシェアリングネイチャーを、理解してもらうのに正直苦労しました。特にネイチャーゲームという部分しか見てくれなくて、「どんなゲームなんですか?」と言われたこともあります。また、「子どもがするのがネイチャーゲームでしょ?なぜ、お年寄りなんですか?」と聞かれたとき、はっきりと答えることが出来なかったことを、今でも思い出します。
しかし、実践を重ねていくと、いつも無表情なお年寄りが、外で活動することで表情が明るくなり、会話が活発になりました。あまり食事をされない方が外で食べることで完食されたり、夜眠れない方がよく眠れるようになったりという効果が目に見えて現れました。
また、職員自身も虫の声、鳥の声、風の音、光を意識するようになり、お年寄りを外出させる機会が、少しずつ増えてきました。こうした光景を見ると、取り入れてよかったとつくづく感じます。
◆活動を更に外へ
活動を始めた当初、熊本県内で開催される介護に関するフォーラムで取り組みを発表させていただきました。また、東京にある高齢者アクティビティ開発センターという機関から、ネイチャーゲームの取り組みを発表してほしい、という依頼も来ました。
昨年は、(公社)日本認知症グループホーム協会の全国大会で、分科会と販売ブースを担当しました。今では毎年東京で開催される「アクティビティ ケア実践フォーラム」で、わたしたちの取り組みを発表させていただいています。このように外に対して活動を紹介してきたことで、介護分野におけるシェアリングネイチャー活動が、少しずつ浸透していると実感しています。
◆課題
これからの課題は、認知症予防に特化したシェアリングネイチャーの実践です。そのために、独自で開発し、エビデンスを取りしっかりと検証する。更に研究、実践を重ね、お年寄りがよりよい生活を営めるようにしっかりとしたシステムを、様々な機関と連携をとり、構築していきたいと思います。
言葉では何かと説明しづらいシェアリングネイチャーの理念ですが、体験することで初めて良さを感じていただけることでしょう。たいへんですが、コーディネーターのみなさんには、地道に続けてほしいと思います。
●コーディネーターのみなさんへ!
①営業は秋からスタート
自分1人で何もかもするのではなく、協力してもらうところは大いに協力してもらうのが、細く長く継続させる秘訣!地域団体、学校、行政などは12月ごろから来年度の計画を立て始めます。特に年度途中からの介入は、今までの経験上、よほどの人脈がない限り難しいので、11月~12月ごろから営業活動を始めるといいと思います。
②まずは社会福祉協議会へ
身近な社会福祉協議会へ行けば、どんな施設が周りにあるのか、ある程度の情報は教えてくれます。事前に、訪問する施設などの理念や活動内容をホームページなどで検索しておけば、話を進める時などもスムーズに行くのではないでしょうか。自然体験活動が出来そうなところに、自ら飛び込んでいくのもいいかもしれません。待つよりも自分で情報を集め、自ら出向いていくことをおすすめします。
③顔を覚えてもらおう!
何度も施設訪問するうちに、自分の顔を覚えていただけると、逆に施設から連絡がくることもあります。
顔写真つきの名刺や、ちょっと変わった名刺なども作っておくと印象に残ります。
◆最後に
お年寄りの「智恵」を引き出し、役割をもっていただくための生きがい支援活動中。
「安全という名の施設閉じこもりにさせない」という強い信念で、外出援助やネイチャーゲームを実践しています。