HUG~社会福祉バージョン~

HUG~社会福祉施設バージョン~

このゲームは、避難者の年齢、性別、国籍やそれぞれが抱える事情が書かれたカードを、避難所に見立てた平面図にどれだけ適切に配置できるか、また避難所で起こる様々な出来事にどう対応していくかを模擬体験するゲームです。

※社会福祉施設バージョンは、市販されているHUG(地震バージョン)を実施した経験があること、マイクロソフト社のパワーポイントを操作できることを前提としています。

HUG導入のいきさつ 施設長・吉本洋

HUG(避難所運営ゲーム)を導入しようと思ったきっかけは、まさに、平成28年熊本地震でした。
熊本地震のときには、職員家族の受け入れをはじめ、自宅倒壊の危険性のあるご利用者の受け入れ、周辺介護事業所の入所者一時受け入れなどを行いました。また、物資の受け入れやさまざまな支援物資を受け入れも、その都度対応し、何とか乗り切りました。

今後、また同様の災害があった際に、果たして同じような対応ができるのだろうか?
スムーズにできるだろうか?
そんな不安がありました。

そんなときに出会ったのがHUG〜社会福祉施設バージョン〜でした。実際に起こりうることを想定し、次々と起こるイベントに対応していく内容のカードゲーム。ペットはどうする?多量の物資が来たが何処に置く?近くの事業所からの利用者受け入れをどうする?などなど実際に起きたことが、リアルに再現されていたのです。

こうした図上訓練を繰り返すことで、いざ、次の災害が来た時でも備えることが出来ることに魅力を感じ、導入する事を決めました。

また、実際のグリーンヒルみふねの図面を使ってHUG〜社会福祉施設バージョン〜を行ってみたところ、臨場感が増し、真剣勝負そのものでした。

動画をご覧になるとわかるように、それぞれが役割分担をこなし、処理していく過程がまさにリアル訓練なのです。これはゲームなので、失敗する事が許されます。何度もいろんなことを試すことが出来ます。本番では失敗する事は決して許されることではありません。

日々の訓練が、いざという非常災害に役に立つのです。日頃から、施設内のどこに何があるのか?把握していなくてはいけません。非常食の場所、非常電源の場所などなど、日頃から意識しないことを意識する事で、災害予知訓練として有効な図上訓練ではないでしょうか?

これからも、何度も何度も繰り返し、行うことでよりよい、対応力と組織力が育まれると期待しています。

実際に自分たちの施設の図面を使用しておこなう事で災害時のイメージを想定する

実は介護している現場では、平面図で施設を見る事はほとんどありません。

しかしHUGでは、平面図を使うことで、実際にどの部屋に何があるのかをイメージすることができます。
イメージが出来るという事は、実際に動くことができるという事です。

HUG(社会福祉施設バージョン)をすることで、自施設をイメージし、考え行動することができます。
複数の事を同時に他の職員と共有することでコミュニケーション能力を育み災害対応能力を身に着けることができます。

実際に災害が起きた場合には、複数の選択肢が同時に来ることがあります。
その中で、いかに優先順位を考え、どの方法が選択肢として有効なのか?それに気づくことができます。

HUG(社会福祉施設バージョン)を何度も繰り返しすることが重要だと思います。

なぜなら、必ずしも災害が起きた際に、同じメンバーがその場にいるとは限りません。
メンバーによっては選択肢の順番が変わる事もあるし、優先順位も変わる事があるかもしれません。

日々のコミュニケーションがいかに大事か実感できます。
平常時にコミュニケーションが取れないのに、非常時にコミュニケーションがとれるはずがありません。

”日々の連携なくして、非常時の連携なし”

平成28年熊本地震を経験した私たちが推奨するHUG(社会福祉施設バージョン)は、
KIZUKI(災害想定ゲーム)と共に、リアルにバーチャルに体験できる災害予知訓練に適したツールであることに間違いありません。

いざ!真剣勝負!ゲーム中の様子を撮影した54秒の動画です。

ゲームの準備と実施

社会福祉施設バージョンの対象者

このゲームの対象者は、基本的に社会福祉施設関係者、福祉関係者です。
一般の方が実施する場合は、社会福祉施設や福祉避難所のことを十分勉強するとともに、必ず福祉関係者の参加を求めてください。

※「避難所HUG」は静岡県の登録商標です。詳細は「HUGのわ」ホームページをご覧ください。

ゲームの実施に必要なもの

(1)図面

・エクセルファイルから印刷します。
・敷地図とデイサービスセンター、入所者の状況、職員の状況は印刷した紙を貼り合わせておきます。

(2)ゲームのしかたの説明

ゲームのしかたは、パワーポイントを使って説明します。

(3)入所者カードの配置

カードの読み上げを開始する前に、461番からの入所者カード(オレンジ色の額縁)を各部屋に配置します。

HUG開発者・HUGのわ主宰 倉野康彦

障害を持つ方や認知症の高齢者など災害時要配慮者の大地震発生時の避難計画については、一度小学校などの指定避難所に避難し、その後それらの避難所を巡回する保健師等の指導で、市町村と「福祉避難所」の協定を締結している社会福祉施設等に移送されるという計画が一般的です。
しかし、実際のところは、東日本大震災でも熊本地震でも、地震直後から社会福祉施設に利用者やその家族、在宅の要配慮者や一般避難者が押し寄せたため、まずはそれらの避難者を受け入れ、その後福祉避難所に移行するという段階を踏んでいる施設が多数あったのが実情です。
つまり、社会福祉施設では、地震発生後ただちに建物の被害を確認して応急対応措置を講ずるとともに、入所者の安全を確保し、通所者や職員の安否確認を行い、さらに押し寄せる避難者や要配慮者を受け入れ、かつそこで発生する様々な出来事に対応するという膨大で複雑な作業を短時間の中でしなければならなくなる可能性があります。

しかしながら、施設では一般的に地震に備えた避難訓練は行われているものの、地震直後の上記のような状況に対応するための訓練は実施されていないのではないでしょうか。
HUG社会福祉施設バージョンは、特別養護老人ホームを舞台とし、深夜に発生した大地震直後から施設の利用者やその家族、一般避難者等が押し寄せてきたという想定で、入所者の安全確保、建物の被害状況の把握や応急処置、職員の安否確認、避難者の受け入れ、情報共有、様々な出来事への対応などの一連の状況をHUGの手法により模擬体験しようというものです。
開発にあたっては、熊本地震の際、押し寄せた避難者の受け入れから福祉避難所の運営までを経験した益城町や御船町、西原村の社会福祉施設、東日本大震災時に福祉避難所となった施設等に聞き取り調査を行いその内容を組み込みました。
本番では、練習しておいたことしかできません。
何の準備もせずに本番を迎えることは、あまりにも大きなリスクです。
HUGは、東日本大震災や熊本地震で役立った実績もあり、楽しくできるゲームですので、是非一度取り組んでみていただければと存じます。

体験した職員の声

中村幸子さん

ゲームでしたが本格的に忙しかったです。
これはチームワークが大切だと思いました。

人だけではなく、ペットなどもつれてこられた想定で、
思ってもみない内容でしたので、勉強になりました。

また、いろいろな疾患がある人たちには、
部屋の選別や同室者との関係など、難しいと思われることを具体的に予想しながら、ゲームをしていました。

介護の現場を経験しているからこそわかることがありました。

平田和美さん

やってみて感じた事

ゲームのスピードがとにかく早い。ついていくのがやっとでした。
意味はわかるのですが、考える暇がない。頭が追いつかないのを実感しました。

行動に移してみたいこと、日常に活かせることはありますか?

テキパキとすること。常に先を読んで、見通しをもった判断をすること。

ゲームの体験前と後で、意識が変わった点

瞬時に判断する重要性。速さに適応するための訓練を日頃から訓練した方が良いと思いました。
熊本地震を経験して、自分の経験と照らし合わせても、HUGのシュミレーションがとても役に立つ内容だと思いました。

また災害を経験していない方は、
実際の災害が起こる前にぜひこのゲームを体験してもらうことで臨場感を味わってほしいと思います。

その他(体験直後の率直な感想)

・やる事が多い中、冷静に対応しなければいけないので
ストレスがかかるのを実感しました。パニックになりかけました。

・役割を分けてそれぞれの判断を信じて、ゆだねる事が大切だと思いました。

・想定として、ペットの受け入れ、外国の方は想像していなかったので考える機会になりました。

・少ない情報で短時間で判断することの難しさを感じました。

・チームワークが大切だと思いました。

・様々な疾患がある方は部屋の選別や同室者との関係など、
介護の現場を経験しているからこそ難しさを感じる事ができました。

・すべて順番に処理するのではなく、
全体を見て指示する人を決めておいた方が、スムーズにできるのではないかと思いました。

・本格的に難しいゲームでしたが楽しく身につくなと思いました。

・すべてに対応するのではなく、
優先順位を決めて必要なものだけ対応するのが、実際には大事なのだと感じました。

・自分の中でこれまでのシュミレーションが甘かったと思いました。

・自分がどの程度、災害のことを意識しているか知るきっかけになりました。